誘惑~初めての男は彼氏の父~

熱帯夜

***


 「もうすぐビアガーデン始まるね」


 車はファミレスの駐車場を出て、街の中心部へと向かった。


 中心部に真横に拡がる大通公園に沿った道を、静かに駆け抜ける。


 徐々にテレビ塔が接近する、すなわち中心街へと近づいた。


 西四丁目、地下鉄大通駅付近。


 週末の黄昏時は、行き交う人々が道に溢れている。


 西四丁目の駅前通を左折して、車は札幌駅の方角を目指した。


 「・・・?」


 運転席の和仁さんが、いったいどこに行こうとしているのか分からない。


 「行き先が気になる?」


 私の心の中を見透かすように、笑いながら尋ねて来た。


 「・・・いったいどこへ向かっているのですか?」


 「うーん、適当。走りやすい場所を、気の向くままに」


 「・・・」


 「そんなに緊張しなくてもいいよ。心配しているような場所に、拉致なんてしないから」


 「一応、信用しようとは思いますけど」


 「こっちも。信用を損なうようなことはしないつもりだけど」


 苦笑しつつ、車は札幌駅前に到達。
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