サヨナラからはじめよう
あなたを身近に感じます

結局、私は翌日も仕事を休むことになった。

こじらせた風邪はなかなか熱を下げてはくれなかった。
中途半端に無理して行ったところで、ぶり返してかえって迷惑をかけるばかりだ。
そう判断した私は思いきって休むことを選んだ。

そもそも、あいつが仕事に行くことを許してはくれなかった。



『涼子さん、おかゆできましたよ』

『涼子さん、熱を測ってみましょう』

『涼子さん、タオルを替えますね』

『涼子さん、涼子さん、・・・・・』



あれからというもの一体どこのメイドなんだと突っ込みたくなるくらい、
司は献身的に看病してくれた。
それはもう必死に。

急激に近づく距離に戸惑いを隠せない私を尻目に、
優しい口調ながらも決して私の抵抗を許さない、そんな強い意志が滲み出ていた。


「涼子さん、ゼリー食べませんか?」

こうして今この瞬間も目の前で尻尾を振って喜ぶ飼い犬のように、
嬉しそうに世話をしている司を目の前にしている自分がいる。

「あのさ、もう随分熱も下がったし後は自分でやるか・・・」

「駄目です」

即答かよ。
っていうかまだ最後まで言ってないじゃん!
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