堀田さんに腕を引かれたまま、私はお店の外に出た。
オフィスにほど近い繁華街の飲食店は、この時間サラリーマンやOLで賑わっている。
お店の外でも、昼間の仕事の鬱憤を晴らすように羽目を外す若いサラリーマンの姿もあった。


「堀田さん。……みんなは?」


トイレに立ったまま出て来てしまった。
先輩の歓送迎会だったのに、こんな風に途中で帰るのは失礼だと思った。


「次の店に移動したよ。カラオケだってさ。
俺はこのまま一次会止まりで帰る」

「……」


堀田さんの返事を聞きながら、私は自分の言うべき言葉を考えていた。


『どこのカラオケですか』


好んで行く訳じゃないけど、顔くらい出しておかないと。
自分ではそう思ってるのに、私の口はそうは動いてくれない。


二次会に行く、とも、このまま帰る、とも言わない私に、堀田さんは二歩前に進んでからスラックスのポケットに両手を突っ込んで、私を振り返って見せた。


「迷ってるなら、本当に来るか?」

「え?」


一瞬何を言われたのかわからず、私は何度か瞬きをした。
だけどすぐさっきの言葉を思い出して、不覚にもドキンと心臓が騒いでしまう。


「な、何を言ってるんですか。
……あ、あの、さっきは、堀田さんの機転のおかげで助かりました。
碧、彼女とは別れたばかりなんですけど、私が無神経だったせいで傷付けちゃって……。
あのままだったら大騒ぎになってたかもしれないし、碧を困らせることにも……」

「他の男のことはどうでもいい」

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