堀田さんが、隣の席の高橋さんの名前を呼ぶのが聞こえた。
自分が呼ばれた訳でもないのに私は思わず背筋を伸ばして、そして顔を横に向けてしまう。


急ぎの書類の作成を高橋さんに指示する堀田さんの声を聞きながら、私は黙って自分の仕事に集中しようとした。
二人の会話は短く簡潔に終わって、指示を終えると堀田さんは席を立って窓際の部長席に大股で歩いて行く。


そんな様子を気にしているのは私だけじゃない。
どことなく視線を感じてフッと目線を上げると、私に向けられていたグループの同僚の視線が一斉に散らばるのを感じた。
それに思わず肩を竦めて、私は高橋さんを気にした。
堀田さんから受け取った書類を手に、ほんの少し困惑してるのが手に取るようにわかる。


「……高橋さん」


そう呼び掛けると、高橋さんは何度か目を瞬かせてから私に顔を向けた。


「堀田さんに頼まれた仕事を先にやって。
他で手一杯なら、そっちは私が引き受けるから」


そう言って、今まで堀田さんが抱えていた仕事を引き継いだ。


「あ、ありがとうございます」


高橋さんは戸惑いながらも、ホッとしたように、堀田さんに頼まれた仕事に取り掛かる。

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