秘密が始まっちゃいました。
第一販売課は案の定、煌々と電気がついていた。


あんにゃろーどもめ~!
つけっぱなしで帰ったな~!


私は室内に入ろうとして、ドアの手前でストップした。

中に誰かいるのに気付いたのだ。


あれは?


荒神(こうがみ)さん?


すぐわかる。背が高くて、脚長くて、スタイル抜群の後ろ姿。
ワイシャツを腕まくりして、電話中みたいだ。


「そうですか」


荒神さんは携帯を耳に当て、喋っている。彼が身じろぎし、角度が代わったので、私から彼の横顔が見えた。


すっと通った鼻梁、いつも自信たっぷりにつりあがっている口の端。
エロカッコいと評判の二重の瞳。

……その瞳が真っ赤に潤んでいた。

大粒の涙がひとつ、すべり落ちる。
次から次へと、彼の頬を転がり墜ちていく涙。


嘘。

嘘でしょ?

荒神さんが泣いてる……。


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