世界の端
世界の端


彼女の家は、複雑だった。
両親は共に再婚で、再婚してからできた年の離れた幼い弟が一人いて、母の連れ子だった自分の居場所を、彼女はいつだって探していたように思う。

「ねぇ、アイス食べにいこうよ」

街に新しくできたおしゃれなアイスクリームショップ。
同級生の女の子たちは、こぞって雑誌に載ったそのお店の話をしていた。

「三上さんも行かない?」

屈託なく誘うクラスの子達へ、申し訳なさそうに苦笑いを浮かべる彼女。

「ごめん。弟をみなくちゃいけないから……」
「あ、そうなんだ。じゃあ、またね」

アイスクリームの話をしながら楽しそうに教室を出行くクラスメートたちの背中を、彼女の瞳が寂しそうに見送っていた。

俯く彼女。
誰にも見られていないと小さくついた彼女の溜息に、私は気がついていた。

その溜息を、今まで彼女はどれほどこぼしてきたんだろう。
誰にも気づいてもらえない、そのため息を……。


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