レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
エリザベスの事情
「本当に、お見合いさせるつもりなのかしら」

 レディ・メアリが帰宅した後、残された写真を見てエリザベスは嘆息した。

 たしかに、周囲の令嬢達はあらかた将来の伴侶を決定済みだ。行き遅れと言われたくなければ、早めに相手を見つけるにこしたことはないのかもしれないけれど。

 だが、エリザベスには急いで結婚しなければならない理由はない。自分の財産は自分でしっかりと管理できているし、ラティーマ大陸との取引だって順調だ。
 
 爵位は王家預かりとなっているものの、マクマリー家の当主としてきちんと勤めている自負もある。

 もちろん当主としては、次代に血を残さなければならないのだろうけれど――それもしばらく先の話で、まだ焦る必要はないとエリザベスは思っている。

 けれど、レディ・メアリはエリザベスが一人でいるのが不安なようで、こうして機会をねらっては結婚相手を押しつけようとしてくるのだ。

 こちらに戻ってきてからまだ三ヶ月だが、エリザベスにも社交界ではそこそこ人気の男性だとわかるような相手だからたちが悪い。

 アディンセル家といえば目立つほどの資産家ではないが、四代遡れば王家に娘を嫁がせたという名門である。リチャード本人にも悪い噂はないはずだ。
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