レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
―閑話 ― ある執事の受難その1
 彼の名は、ヴァレンタイン・パーカー。二十六歳、マクマリー元男爵家の執事である。

 執事として働くには、年が若いのだが、父親が死亡した後、執事職を引き継ぐようにと主から命じられていた。

 主、と言っても最後に姿を見たのはもう五年以上前のことだ。暗黒大陸と呼ばれるラティーマ大陸に出発したその日。

「絶対に、帰ってくるから」

 と誓った少女は――今やマクマリー家当主となっている。
 
 先代のマクマリー男爵は、エルネシア王国では何かと失敗が多かったものの、大陸に渡ってからは必死に働いたらしい。

 けれど、莫大な財を築いた後、無理がたたったのか死去したのは数年前だ。一人残された令嬢エリザベスはすぐに帰国するのかと思ったのだが――。

 執事であるパーカーや、叔母であるレディ・メアリの予想に反して、彼女は大陸にとどまることを選択した。
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