恋じゃなくてもイイですか?
始めに


「おはようございます」


朝食の準備をしていると、いきなり背後からぼそりと声がした。


驚いて体がびくんと反応した。


振り返ると、ネズミ色のスウェット上下に身を包んだハルニレが、引き戸の前に突っ立っていた。


「おはよう」


頭頂部に鬼●郎のような妖怪アンテナがびよーんと立っていて、思わずそのアーティスティックな寝癖に見入ってしまった。


少し間があいて返事をした。


「お皿、テーブルに運びますね」


「あ、うん。お願い」


まだ眠そうな目をしたハルニレは焼けたトーストの乗った皿を持ち、隣の部屋へと向かった。


「コーヒー落としますけど、ミーちゃんも飲みますか?」


ハルニレが扉からひょっこりと顔だけ出してそう答えた。


「あ、うん。お願い」


サラダの盛り付けをしながら顔を上げると、「解りました」とハルニレは微かに笑った。


「ミーちゃんのカフェオレ、砂糖はティースプーン2杯」


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