調導師 ~眠りし龍の嘆き~
第三章 名を冠す
‡〜大切な記憶〜‡

みなと…。




『美南都。
よく覚えておくんだよ。
お前の名前には二つの意味がある…
美しい南の都…
それがお前の名前…。
けど、もう一つ目印に付けたとっておきの名前がある。
水を薙ぐ刀と書く。
これは秘密の名前だよ。
誰にも教えちゃいけない大切な名前だ。
名前は声を届ける目印…
今は分からなくていいよ。
きっと分かる時が来る…その時まで、毎日こうして同じことを話すから…』




覚えておいて…。




「と…さま…」
「美南都ちゃんっ!」
「美南都っ」

名を呼ぶ声に、急激に現実へと引き上げられる。

「おばあちゃん。
おじいちゃん…」

まだ少し意識が微眠む感覚が残っている。
見たことのある高い天井。
けれど、家ではない。
青いカーテンと清潔感のある白い壁。

「美南ちゃん。
目が覚めたかい?」

カーテンの隙間からひょっこり顔を出したのは、祖父と差ほど変わらない年の男性。
小さい時からお世話になっている主治医の永久(トワ)先生。

「?……」
「ふははっ。
なぜここにおるのか分かっておらんな。
左肩の傷が炎症を起こしてな。
将さんと花さんが血相を変えて意識のない美南ちゃんを運んで来たんじゃ」
「美南ちゃん。
すごい熱で丸一日、意識不明だったのよっ」
「ごっごめんなさいっ…」
「まだ少し熱があるが、その様子だともう心配はないな」
「ありがとうなトワちゃん」
「おうっ。
わしにとっても美南ちゃんは孫のようなもんだしな」

遠い意識の中で、とても懐かしい声を聞いた気がする。
忘れちゃいけない事。
何度も聞かされた話。

「美南都ちゃん?
どうしたの?
痛む?」
「ううん。
大丈夫。
今は痛くない。
ちょっと夢を思い出してただけ」
「夢?嫌な夢?」
「とうさまの夢…
まだ…こんなにもはっきりと声を覚えてるんだなって…」
「そう…」


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