調導師 ~眠りし龍の嘆き~
第六章 大地染まる時
‡〜過去の戦場〜‡

(うおぉぉぉぉ!!)

(きゃぁぁぁぁぁぁぁ!)

(いやぁぁぁ!!)

数え切れない程の人々の悲鳴。
炎に覆われた村。
そこここに打ち捨てられた遺体。
赤黒く大地を汚していく夥しい量の血。

(うえぇぇぇん)

(がぁぁぁぁっ!!)

泣き叫ぶ子どもの声。
絶命寸前の叫び。

「殺せぇぇぇ。
この地は私の物だぁ!!」

その手には閃き、惨殺する青き刀。
しかし、放つ光りは血のように赤い。

「ふははっ。
素晴らしいっ。
素晴らしいぞっこの刀っ」

狂気に満ちた表情。
恍惚の光りを宿す瞳。
まるで、虫を払うように逃げ惑う人々を切り捨てる。
命を奪う度に、刀は脈打つように青い光を放つ。

「やはりッ。
私にこそ相応しいッ」

光は一層赤を帯び、その青い光をも消して行く。

「…っ美しい…」

魅せられるように刀を見つめるその目には、狂喜しかみられない。

「これで…千人目だっ!!」

(うぎゃぁぁぁぁっ!!)

「ひははははっ」

強く脈打った刀は、一段と強い赤を放った。

〈うひゃはははっ〉

狂ったように笑い出す。

〈へへへひゃひゃっ〉

意識は完全に乗っ取られてしまった。
狂った人形のような男。
一層、殺戮に酔いしれる。
しかし、それは唐突に止んだ。



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