私んちの婚約者
恋愛、婚約者
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数日後、父に資料運びを手伝えと言われて、また私は会社にやって来た。
さすがに社長と一緒だと、女性社員達も私を視線で突き刺すことは出来ないらしい。遠巻きにヒソヒソするのみ。

うう、こっち来て言ってよね!喧嘩なら言い値で買ってやるとも!

けれどこの間と違うのは、何故かやたら愁也が私の傍に居て離れない。
忙しいと自己申告している通り、彼の元にはひっきりなしに社員が寄ってきては『天野チーフ』の判断を仰いでいる。
私の横にくっついて移動しようものなら、皆が走り回るはめになるのよ、すっごく悪いじゃん!


……もしかして、神谷さんからガードしてくれてるのかな。


その神谷さんは、愁也と私を見て苦笑してたけどね。なんだかすみません。



「お嬢様」

父も愁也も社員に呼ばれ、わずかな時間一人になった私に、涼しげな声がかけられた。
聞き覚えのある声に半ば予想して振り返るとーー

「三崎さん……」

やっぱり美人OLの三崎さんが微笑んでいた。


「私、愁也と付き合ってたんです。その顔はご存知ですよね?」


悪戯っぽく笑う彼女は、とても綺麗。
何が言いたいんだろう。

い、いちゃもんつけられたらどうしよう。

『あなたに愁也は似合わないのよ!』とかさ。
本当の事だけに、反論できないや。


「この間、彼があなたを追って行ったでしょう?
私と付き合ってる間、愁也が私の為に走ってくれた事なんて一度も無かったんですよ。彼はいつだって当たり障り無くてスマートで、本音でぶつかった事なんてなかったんです」


クス、と笑う彼女はイヤミじゃない。
嬉しそうに、楽しそうに言った。


「あなたは彼に大切にされてるの。堂々と、胸を張っていいんですよ」


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