檸檬-レモン-
フリーズ


花火大会の当日。


まだ16時なのに、あちこちに浴衣姿の女の子が見える。

私も浴衣着てきた方が良かったかな…

って、山口とだし。


ごくりと唾を飲み込んで、なんだか緊張してきた自分がいる。


「胡桃沢」

「よっ」


山口は今日も爽やかだ。


「なんだ、浴衣じゃないんだ」

「着てきて欲しかったの?」

「暗黙の了解だろ?」

それを聞いて笑いがこみ上げる。

いつもの、山口だ。

駅から土手までの道をゆっくりと歩き出した。


「山口もさ、他に誘いたい子いたでしょー?よりによってあたしですか」

「随分と自分を下げるね。別に行きたいから誘ったんだよ」


単純に嬉しい。


「高くつくよ?」

「調子乗んなし」


山口の隣は楽しいな。
本当、楽だ。くだらないことでもお腹が痛くなるまで笑える。


屋台でビールと唐揚げを買って、ほとんど人で埋まった土手の真ん中に腰を下ろした。


「かんぱーい」


まだ花火は上がっていないけど…。


生暖かい風が今は心地いい。


「やっぱビールがうまいな、夏は」

「オヤジみたいなこと言うなよ」


山口はけらけらと笑いながら、私を見る。



.
< 41 / 97 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop