哀しみの瞳

二人の未来

母さんが、ばたばたと部屋に入って来た。 「秀ちゃん、もう、東京への準備始めないと、母さん、父さんと一度、向こうのアパート見てこようと思うけど、秀ちゃんも一緒に行くぅ?」 「いやっ、僕は差し当たりの身の回りの物、自分で整理して荷造りしておこうと思うから、母さん達は、申し訳ないけど、アパートの方をお願いできるかな?」 「それなら母さんこの際、父さんと一緒にアパートの片付けして、色々揃えて、生活出来るようにしてこようかしら!一泊してきて、一度に終わらせてこようかしら?」 「そうしてもらうと、ありがたいです。土曜日と日曜日で、父さん、せっかくの休みなのに、大変だけど、大丈夫?」 「そんなこと、貴方の為よ!大丈夫に決まってるじゃないの、父さんね、貴方が東大の法学部、合格したもんだから、もう、嬉しくて嬉しくて、仕方がないのよ。挙句に貴方が弁護士になるなんて言うものだから、そりゃもう、その喜びようったら、大変!俺の自慢の息子だって!」 「それじゃぁ、母さん、よろしくお願いします」 もう、それ以上、君子のごたくを聞いていたくなかった。 僕は自慢の息子になりたくて、弁護士になるんじゃない!僕は理恵を守る為に… ただそれだけの為に… 大人は何も分かっていない。分かろうともしない。 父さんも、母さんも、大人は相変わらず、嫌いだ!
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