砂糖菓子戦争

蜂蜜漬けの心


「どういうことだと思う?霧忌(むいみ)」

あれから数日が経った。春夏冬さんと目が合ったのはあの時の一回だけで、進展など何もないままの日々を過ごした。過ごしたのはいいものの、あの彼女の瞳が妙に腑に落ちず、俺は唯一といっていいほどの相談相手の霧忌和(むいみ なごり)を学校終わりにファミレスへと誘った。
ことの発端を多々掻い摘んで話すと、彼はストローの先端を齧る口を止め俺の顔を見つめた。あまりにじぃっと見つめるのでどうにも居心地が悪くなる。
少しだけ顔をそらすと霧忌は意味深に腕を組み、見つめる視線を和らげた。

「どういうことでもないさ、甘露」

「はぁ?」

背けた顔を霧忌に戻すと、彼はとても真面目くさった顔で

「そのままの意味だよ」

と真面目に言った。それから彼はドリンクバーで注いできた炭酸水を一口飲み、また言葉を紡ぐ。

「いいか?彼女、春夏冬純という人物は極めて、実に極めて、特殊な人物だ。まさに漫画に出てくるヒロインのような存在だ」

まるで答え合わせをするかのような口ぶりに、相変わらずだと思いながらも、彼の話に相槌をうつ。

「その美しい容貌から男性に言い寄られるということは、容易く想像できる。美しい容貌『から』だぞ。あぁ、遠まわしに言ったが、ようするに『容姿目当て』」

コップに入った氷がきらきらと輝いているのが視界の隅に入る。

「まぁそんな理由で好意を寄せられても嬉しくはない。当然告白だとかいうものは受け入れない。なら振られた側はどうするか、はい!甘露くん」

ストローを杖のように振って俺の方へと向けた。

「…諦める?」

彼はコップにストローを戻しながら、「あぁー」と納得したような素振りのリアクションをわざとらしく発し、また話始めた。

「勿論、そういう選択肢もあるけれど、振られた奴等の考えの中にこういうものがあってもおかしくはない。『どうすれば彼女を振り向かせることができるのか』、『容姿目当てで告白しても振られる』。

じゃあこうすればいい」



「『あくまで性格が目当てだと《思わせればいい》』」



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