不器用なシンデレラ
 軽くお辞儀をしながらチラリと理人くんの方を見ると、彼はすでに仕事モードでメールを処理していた。

 何時から出社してるんだろう?

 土曜日の朝、目を覚ますとスーツ姿のまま私は自分のベッドで寝ていた。

 理人くんのものらしいスプリングコートをギュッと抱き締めたまま。

 私を起こしてくれた祖母の話では、タクシーで理人くんが送ってくれてそのままベッドまで運んでくれたらしい。

 こんなことならもっと部屋掃除しとけば良かった。

 それに、成人式の時の隠し撮りの写真見られた・・・かな?

「鷹野くん、金曜日の夜は迷惑かけてごめんなさい。駄目にしたスーツ弁償します。あっ、コートはクリーニングして返すね」

「スーツ弁償するっていっても、山下さんの初任給だけじゃ足りないよ」

「・・・じゃあ、分割払いでお願いします」
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