木曜日の貴公子と幸せなウソ

制御できない



どこをどう走っているのかわからなかった。

だけど、段々見覚えのある街並みが車の外を流れ始める。


「懐かしいな。高校の通学路」

「……そうですね」


ああ、やっぱり……。

卒業してから、一度も来た事がなかった高校。

5年もたてば、街並みは少し変化する。


「オレが卒業してから、学校の前にコンビニできたんだろ?」

「……多分」

「ああ、そういや、萌は卒業式の予行と当日は欠席してたんだっけ?何で?」

「……」


爽やかな顔して、鋭いナイフで刺すような事を言う先輩。

もちろん、先輩に会いたくなかったから。


「熱……出たんだと思います」

「へぇー?ずいぶん都合のいい発熱だね」


私の答えに、先輩はアハハと笑った。


< 73 / 207 >

この作品をシェア

pagetop