狙われし姫巫女と半妖の守護者
第二章 姫巫女

遠き記憶の君



*・*・*・*・*

墨で塗りつぶされたようなまっ黒い森の中。

何度も転んでは立ち上がって、足がちぎれそうなくらいに走っていた。

幼稚園の園服は泥だらけ。

泣きじゃくっている頬はもうビチョビチョ。

たまらずに大きな泣き声をあげ、小さな足を一生懸命前へ前へと動かしている。

出口も明かりも、なんにも見えない。

閉じ込められたみたいにどこまでもまっ暗な森が続く。

さっきからずっと、目に見えないなにかが追ってくるんだ。

「あれが姫巫女の子供かぁ?」

「子供はただでさえうめぇ。姫巫女の子ならもっとじゃねぇか?」

「早いとこ食っちまおうぜ」

イヤらしく裏返った声がどんどん近寄ってくる。

振り向けば真後ろにいそう。

「イヤだイヤだ、やめてー!」

怖さから耳をふさいで泣き叫ぶ。


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