キミと帰る道
◆1 観賞用の王子様
【◆1 観賞用の王子様】





(すず)





私、逢原(あいはら)すずは、高校生になって5ヶ月。
そんな私には…気になる人がいる。





「ねえ、見てー!
王子だ!」





窓から中庭を指差してるクラスメイトの女の子の言葉に、私も視線を窓の外に向ける。





大きな木の下にあるベンチに腰をかけている人。
そこだけ日が当たってなくて、陰っているし。





…ここは3階なのに。
よくあんな遠くにいる…〝王子様〟のことがわかるんだろう。





ものすごく冷たくて人と話してるのをよく見ない男の子。
目の保養だけになるから、〝観賞用の王子様〟と言われてる。





…私はそんな、藤谷(ふじたに)くんのことが気になっている。





だって、この世に…ただ冷たい人がいると思えないんだもん。






なんで人と話さないのか。
なんでそんなに冷たいのか。





それに…かっこいいから。





…気になるんだもん。






「すずー!」





窓とは逆方向から聞こえる声に、私は視線を移す。





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