キミと帰る道
◇20 キミだけを見つめる
【◇20 キミだけを見つめる】





(すず)





ガラッ———。
病室に入ると、藤谷くんはベッドの上で体を起こして窓から外を眺めていた。





だけどドアの開く音が聞こえて、くるりと振り返った藤谷くんは、首を傾げた。





「……すみません。 どちらさまですか?」





…この病室に通うようになってから、1週間が経つ。
だけど私たちは、前みたいにまた〝初めまして〟を繰り返しているんだ。





その質問をされるたびに胸が痛むけど。





「藤谷くんの友達の、逢原すず!」





……がんばって笑顔を見せるんだ。
だって、藤谷くんはなにも悪くないんだもん。





だから私は、藤谷くんが覚えてくれることと思い出してくれる日が来るように。
ただ、月日が流れるのを待つだけ。





「……俺の友達?」




「うん! 藤谷くんの友達っ」





諦めなければ望みはきっと叶う。
…そう信じてれば、大丈夫。





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