憂鬱なソネット
そんなわけで。

あたしは今、最近できたばっかりの超高級ホテルのロビーにあるラウンジで、

ぼんやりとお見合い相手を待っている。




さすがに、昔の映画みたいなお見合いではない。



高級料亭でお互いの家族がそろって向き合って、

まずは親どうしが喋ってからの

「あとは若い者どうしで……」的な

気まずすぎる設定ではなくて、そこだけは安心。




仲介人が用意してくれたホテルで、お見合いをする本人たちが待ち合わせをして、

「若い者」だけでお茶をする、とまあこういう流れだ。




「ふぅ………」




勝手に出てくる溜め息。




慣れないてろてろ生地のピンクのドレスワンピースを着せられ、


あほみたいに高いハイヒールを履かされ、


さらに美容院でヘアメイクまでさせられたあたしは、


相手と会う前からすでに疲れきっていた。




あたしは気分を変えようと、周りをぐるりと見渡してみる。




さすが最高級ホテル、豪華絢爛な世界が目の前に広がっていた。




きらっきらのシャンデリアが、あっちにもこっちにも。



謎の壺やら絵画やらのいかにも高そうな装飾品の数々。



ラウンジには、ひとつウン十万もしそうなふっかふかのソファーがたくさん置いてある。



テーブルに載っている角砂糖の入れ物まで、見たことないくらい高級そう。



水のグラスも複雑な模様がついていて、レモンのスライスとミントがひとかけら、浮かんでいる。





………まったくもう、居心地悪いったらありゃしない!





早く帰りたいよ、一般庶民な我が家へ。





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