第三部 ご挨拶編

【憂鬱なクリスマス】









「おねえさぁん、メリークリスマス!」






浮かれきったテンションで背後から声をかけられて。



あたしは大人げないと自覚しつつも、思いっきり眉根を寄せ、険しい顔で振り返る。




サンタの変装でクリスマスケーキを売りさばいているらしい男は、あたしの顔を見た瞬間、引きつった笑いを浮かべて、すすっと目を逸らした。






「………誰も彼もがクリスマスをエンジョイしてると思うなよ?」






そんな卑屈で虚しい独り言は、男には届かなかっただろうけど。



不穏な気配は伝わったらしく、男は『触らぬ神に祟りなし』ってな具合に、ほかの道行くカップルたちに標的を変更した。





どーせあたしはクリスマスイブに何の予定もない寂しい女ですよ。





今だって残業帰りだし、明日も普通に仕事だ。




世間がクリスマスだろーがなんだろーが、あたしはさっさと帰って寝て、明日の仕事のために英気を養うんですよ。





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