この思いを迷宮に捧ぐ
懸案5

女王の権威失墜の件



「気が済んだ?」

ひんやりとした地下牢の一室で、壁にもたれたままの姿勢で、全く動かなかった晁登。

鉄格子越しに、千砂がようやくかけることができたのは、こんな言葉だけだった。


「あいつ、死んだ?」

答えずに質問を返す掠れた声は、あの時の熱情や毒などが、嘘のように消えていて、千砂は胸を突かれる。

「いいえ。まだ生死の境をさまよってる」

正直に実情を教えてやると、初めて見るような冷たい目で、晁登は千砂を見た。

「さんざん苦しんでから死んでくれるなら、いくらかは気が済むよ。…まさか君、あいつを手厚く看病させてるんじゃないだろうな」

はあ。まさかもまさかだと、千砂は密かにため息をついた。

「私がさせなくとも、彼にだって家族がある。あんな人でも、彼らは生きていて欲しいと願って、熱心に看病しているようよ」

ちっ、と舌打ちした後、「全員死ねばいいのに」と呟いた晁登の表情は、幼い男の子が毒づいたみたいだったけど、その言葉が本気だというところだけが違っている。


「ねえ」

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