それでも僕は君を離さないⅡ
γ.もう叶わない想い
奈々の実家から両親が見舞いに来た。

俺は席を外した。

この旅行の前

九十九里の海の話しを聞いた時のことを思い出した。

彼女の記憶の中には俺の存在だけがないのだろうか。

両親は彼女を千葉へ連れて帰るのだろうか。

この先ずっと奈々は俺を忘れてしまったままでいるのだろうか。

疑問ばかりが渦を巻いて

俺の思考は麻痺していた。

担当の外科医はしばらく様子を見るしかないと言っていた。

無理強いして心理的なストレスが増幅すると

罪悪感、喪失感、倦怠感、躁鬱感

そして自傷行為に至るケースもあると聞いた。

ある特定の事柄だけを思い出せないとしても

生きていく上で大きな支障がなければ

そのままでいる方が本人にとっては楽だとも言っていた。

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