それでも僕は君を離さないⅡ
ζ.愛されて
俺は親父に聞きたいことがあった。

平日の午前中に半休を取って

清水の実家へ向かった。

確かクリニックの定休日は水曜日だったはずだ。

俺の親父は精神科医でメンタルクリニックを開業していた。

「忍、いきなりだな。」

「今日は休みだろ?」

「午後は救急の方へ出てる。」

「休みじゃないの?」

「用は何なんだ?」

「聞きたいことがあるんだ。」

「私は時間がないから母さんに聞いてくれ。」

「親父じゃないとダメなんだ。」

「ほう。」

俺は単刀直入に切り出した。

「もし記憶が途切れたとしたらその人の心理がどういうものなのかを簡潔に教えてほしいんだ。」

「それは誰の記憶のことだ?」

「誰とは言わない。人間のだよ。」

「まったく、何を言うかと思えばそんな大ざっぱな質問じゃ山ほど答えなけりゃならんよ。」

「どういうこと?」

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