名前を教えてあげる。
チョコレート・ハニーヌガー


バイトのない土曜日は午前中から順の部屋で過ごすのが、お約束だった。


順の勉強が終わる昼過ぎまで(だいたい2時間くらい)、彼の背中を見ながらノートパソコンを借りてインターネットをやった。

学園には共用のパソコンしかないから、思う存分ネットサーフィンなんて出来ない。
あっという間だったから、待つのは全然苦じゃなかった。


最後に食べる為に残していた美緒のショートケーキの苺を順がひょいと摘み、美緒の唇に近付ける。


「はい!口、開けて」


こくん、とうなづいて美緒が口を開けると、順の瞳が情欲の色を帯びる。


空いた美緒の皿を素早く奪い取り、フローリングの床に置いた。


「あんっ…ヤダ、まだ食べ……」


美緒の口の中には、苺が入っているのに、順はいきなりベッドの上に美緒を押し倒した。

手にした小さなフォークが順に当たらないように美緒は右手を垂直に上げた。


「順…フォークが」

「ああ」


フォークを一瞥した順は、邪険に払いのけるようにして、それをフローリングの床に放り投げた。

カン、と小さな金属音がして、美緒は自由になる。


何をするにも思慮深い順なのに、欲しくなると、別人のように粗暴になることがあった。




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