名前を教えてあげる。

・Mr.Monky island



「サンフランシスコなんて言ってないよ。シアトルだってば!」


美緒が顔を赤くして答えると、真由子は似たようなもんじゃん、と適当なことを言った。


真由子の痛んだ毛先に、美緒の目は釘付けになる。

美緒はこの1年で黒いボブヘアが肩まで伸びただけなのに、真由子は緩やかなパーマをかけたり、茶色く染めたり、髪型を変えた。



ーーこんなバサバサの髪になっちゃって、これでおしゃれなつもりなの?


と内心、意地悪く思ってしまう。


順は美緒のするり、としたストレートな黒髪が好きだと言った。
シルクみてえ、と言って。


真由子を心の中で批判するようになったのは、順と交際を始めてからのことだ。


「順、あさって帰ってくるんだあ。ソコ行くのは、夏休み始まってすぐかな」


口元が緩んでしまうのを、美緒は隠し切れなかった。


2週間も離れ離れになってしまうのは辛いけれど、順が国際交流の授業の一環として、学校代表の3人のうちの1人に選ばれ、短期ホームステイの為に渡米したのは、美緒にとっても鼻が高かった。


順は、毎日画像付きのメールを寄越して、アメリカでの出来事を美緒に教えてくれた。



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