◇◇ 番外編~理由~

※P5の空白の時間。美羽があまり覚えていない出来事。




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颯也は大学を卒業してから父親の会社の開発部で働いていた。
『社長の息子』と知っているのは一部の役員くらいで、社内では公言せず目立つことは一切しないで普通に仕事をしていたが、センスは光一だった。

そんな彼は27歳という若さで社長になる。
颯也には弟が一人いるが、まだのんびりと大学生。
順番的にいずれは自分が継ぐのだろうと思ってはいたが、まさかこんなに早いなんて。
「来期からお前が社長だ」と、父親は突然席を譲り、そして今は母親をつれて旅行三昧。
小さな玩具会社として始めたものを一代でここまで大きくしたのだ。若い頃にまったりとできなかった反動だろう。

そばにいる神条は颯也の父親が目をつけて自分の会社で働かないかと誘い、大学を卒業後ずっと社長秘書を勤めている。今思えばこれは『計画』だったのかもしれない。
落ち着きがありきっちりしていて、頭のいい神条。
颯也が社長になったとき、遠慮をすることなく意見を言うことができ、サポートができるのは神条しかいないと。

覚悟はしていたが、いざ社長という立場になると疲れるし、神条は小姑のようにうるさい。
上手くいかないことが続くとうんざりする。
しかし、自分が社長になった途端に会社が傾いたなどと言われたくはないし、継いだからには先代よりも業績を上げてやると、颯也は思っていた。

無理をして体調を崩すことがあっても「ただの風邪」と、疲れていることを周りには絶対に言わない。だが、神条にはバレてしまうのだった。

最近は業務にも慣れてきた。
しかし週末の仕事終わりは気が抜け、疲れを感じるようだ。
そんなもの、見た目には現さずいつ見ても余裕があり優美だが。


「ああ? 颯也もう帰るのかよ」


黙って立ち上がった颯也はほろ酔いの蓮斗に腕を掴まれ、カウンター席に戻されてしまう。


「せっかく来たんだからもう少し飲んでけよ」

「颯也は車だからウーロン茶だけどね」


蓮斗の言葉に店内をうろうろしていた春哉が側で立ち止まり、笑いながら言った。
春哉のバーには颯也、蓮斗、神条がよく飲みに来ている。
今日は蓮斗が店に来て、電話で颯也を呼び出したのだ。

行く気はなかった颯也だが、そういえば新しいピアスを頼もうと思っていたし、そのついでとして少しだけなら付き合ってやろうとここへやって来た。しかし、そろそろ。


「帰りたい」

「なんでだよ」

「明日も仕事がある」

「大丈夫」

「何が大丈夫なんだよ」

「何か大丈夫」


相変わらずの蓮斗の適当さには感心する。
きっとそれが今でも親しくしている要因なのだろう。

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