グッバイ・メロディー



緊急会議はスタジオ練習のあと、駅前のファミレスにて開催された。


スタジオ代や楽器の維持費、その他機材等にもろもろかさむ普段の出費にくわえ、CDを自主制作したおかげで財布のなかがすっからかんになっていた4人は、これから長丁場になるであろうにもかかわらずドリンクバーしか注文しなかった。


さすがに店員さんに申し訳なくてわたしだけ苺パフェを頼んだけど、想像以上にゲキアマだし、コーンフレークでお腹がふくれちゃうしで、そのほとんどは結局こうちゃんの胃袋におさまることになってしまった。

お決まりのパターン。



「で、どーするよ?」


どこか神妙な面持ちのアキくんが、少しうわずった声で本題に入る。


テーブルの上に広げられたA4用紙は4枚。

トシくんが、それらを丁寧に扇形みたいにしてならべたあとで、いちばん左端のものをぺらりと拾い上げた。


どこからどう見てもただのコピー用紙。

それでも、これがみんなの人生を大きく変える重要な切符になるのかもしれないと思うと、軽々しく触れることさえできない。


「どうしたい?」


さっき脇坂さんに言われたのと同じことを、コピー用紙に目を落としたままのトシくんが、アキくんに訊ねた。


「どうって……」


考えるように唸ったけど、答えはすでに決まっているみたいな顔。

アキくんはこうちゃんとはまた違ったふうな、わかりやすい男の子だな。

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