はぁ。

「葛原さん……ほんとに最近溜め息多いんだけど。何か悩み事でもあるの?」

 溜息ばかりつく私を店長が心配してくれるのだが、理由を話すことなんて出来ない。

「いえ、店長……人間なら誰しも失敗はありますよね……」
「うん?まあねぇ。……葛原さんでも失敗することあるんだねぇ」
「そりゃありますよ……」

 コーヒーカップを拭きながら、また一つ溜め息を落とす。

 あれから一週間が過ぎた。

 支倉さんに無理矢理抱き締められ、再び求婚されたが、二度と目の前に現れんな的な事を言って逃げてしまった。

 しかし時間が経つにつれてだんだん冷静になってきて、流石にあれは言い過ぎたかな、と自己嫌悪に陥る。

 支倉さんて温厚そうに見えるけど、怒ってたらどうしよう。

 ……いや、何を思っているの、好きでもない人にどう思われたっていいじゃない。……好きでもない人に……

 はぁあああ……

「葛原さん……本当に大丈夫?」
 店長が心底心配そうに呟いた。
「すみません……。もうすぐ上がりなんで、さっさと帰って休みます」
「良く休んで、早くいつもの葛原さんに戻ってよ?」
「私も戻りたいです……」


****

 太陽が沈みつつある夕方6時。昼間の暑さから少し解放されて、若干生温い風ですらなんだか心地良い。
 気分を変えたくて、帰り道でお気に入りの洋菓子店の大好きなプリンを買って帰る。これで少し気分が高揚するかな。

 もう、支倉さんの事は忘れよう。

 法事もしばらく無いし、これで当分会うこともない。きっと支倉さんだって会わなければ私の事なんて忘れるに違いない。いいんだ、これで。

「ただい……」

 家のドアを開け一歩侵入して、立ち止まった。家の玄関に、我が家にあるはずのない草履が。
 まさか……まさか、まさか……

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