***

 休日の昼下がり。

 指定された時刻ぴったりに家のインターホンが鳴った。

 きたぁ!

 慌て気味にドアを開けたら、いつも通りの僧侶の格好をした支倉さんがにこやかに立っていた。

「……こんにちは」
「こんにちは。では花乃さん。参りましょう」
「はい……」

 家の前に停まっていたのは、棚経の時のハイブリット車ではなく大きな国産の黒いSUV。

「この前の車と違うんですね」
「あれは寺の車です。これは私の車」

 さ、と支倉さんは慣れた様子で助手席のドアを開き、掌を差し出し私を誘導した。

「……」

 こんな女性扱いされたの初めてだな。と思いながら車に乗り込んだ。

 前日の夕方、仕事を終えてちょうど家に帰ってきたところで支倉さんから連絡が来た。スマホが鳴った瞬間、「わあ!!きた!!」とあたふたしてスマホをお手玉してしまったが。

 支倉さんは夕方から法事が入ってしまったそうなので、格好も法衣のまま。

「まぁ、強いて言えば行き先も身内みたいなものですから」

 だって。

 忙しいならまた別の機会でもいいですよと言ってはみたのだが、支倉さんに会える時間は少しだがそれでも是非行きましょう、と言われ押しきられる形で承諾した。

「で、どこに行くんですか?」

 車を静かに発進させると支倉さんは

「私の地元がここから車で30分位なのですが、そちらへ。老舗で私の実家がお世話になっている店がありまして。そこの甘味が美味しいのですよ。小さい頃からよく食べていて、慣れ親しんだ味の店です」

 と、前を向いたまま楽しそうに言った。

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