ゆきあそび

 夜中になると、真っ暗な道に街灯だけが光る田舎は、私に哲学を教えた。
眺めていると闇の中に真実が隠されていて、
照らされる事でそれは死ぬのだと思った。

TVから流れ出るスタジオは、都会への憧れを募らせた。現実とは違うどこかへ行く為にはどうしたらいいか、考えるようかに、その憧れは消えたり浮かんだりした。
電車から過ぎる街並みを、未だ見ることのない
目的の通り道で目的を見つけた人々を空想し、
自らと重ねてみる。
広くあまりにも巨大なポリスの中で私は小さく、責任を負わずにいる。
どれだけ心は安らいだのか、他人にわかるだろうか?
私の為に全てが生きているかのように思える充実を、人間の気配がない鉄の街並みの中に感じた。
退廃的な美しさと放棄の快感を覚え、私は過ぎる都会を見つめていた。

やがて駅に着き電車が停まる。
私は駅を出る。
美術館に入ると、私の精神は絵画と建物に吸い込まれ、二度とは帰って来なかった。
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