きみと世界が終わるまで


ああ、よかった。


周りに誰も人がいないで。


僕は青々と広がる空を見上げ、そして再び前を向き自転車を漕ぐ。


僕らの周りにいるのは、道路をちょこんと歩く小鳥と、はしっこの方で僕をぎらりとした目で睨む真っ黒な猫くらい。


「……ゆりあ、大好きだよ」


そう言って頬を緩めたとき、きみのシャンプーの淡い香りが僕の鼻を僅かに掠めて。


心なしか僕に巻きつくきみの腕の力が少しだけ強まったような気がした。


それに分かりやすく高鳴る僕の胸。


初めて自転車にふたり乗りをしたときのようにドキドキが止まらなくなって、ゆりあの存在を意識してしまっている自分がどうしようもなく恥ずかしい。


だから、僕は気が付かなかったんだ。


きみが本当は起きていて、僕のこの告白じみた言葉を聞いていることも。


そして、さっきまでは全てを受け入れたように笑っていたきみが、本当は不安でたまらなかったことも。


僕のこの言葉を聞きながら、きみの頬に何粒もの涙が静かに流れていたことも。


──僕は全く、気付くことができなかったんだ。


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