現代のシンデレラになる方法



「そういえばさ、相澤が作る弁当は本当毎回うまいんだけど、この前のサンドイッチはすごかったなぁ」

えっと、多分フランスパンを使ったバケットサンドのことかな。

あれは色々調べて相当気合入れて作ったのだ。
気に入ってもらえて良かった。

「あれ挟んでたクリーム何?あれめっちゃおいしかった」

「え、本当ですか!」

思わず声が跳ね上がる。
そう、気合を入れて作ったのはそのクリームの部分だったのだ。

「わー、嬉しいな」

思わず顔が綻ぶ。

そんな私に、先生は少し驚いたよう。

「なんか素直に喜んだの初めてだな。いつもは謙遜するのに」

「あれ、レバーなんです」

「え、マジで?俺が一度残してから入れなくなったと思ったら」

「ちょっと工夫して、なんちゃってレバーパテにしたんです。なるべく色とか匂いで分からないようにして」

と、嬉しさのあまり、私は珍しく饒舌にネタバラシする。

しかし先生は黙ったまま。


……あ、ちょっと調子に乗りすぎた?

もしかして、だまして嫌いなもの食べさせられて怒ったのかな?

そもそも私なんかが、先生の好き嫌い克服なんて企てること自体図々しかったんだ。

「す、す、すいません。私なんかがっ、」

と言ったどこで、先生がやっと口を開いた。

「……まさか、そんなことまで考えてくれてたとは。うちの母親よかよっぽど母親らしいよ」

「え……?」

「今度メシでも奢らせて」

「え、え、いいです!」

「いやそれ位しないと俺の気が済まない。都合いい日教えて」

「そ、そんな……っ、あの本当に私が勝手にしたことなので、気にしないで下さい」

「和、洋、中どれがいい?」

いつものようにグズグズ煮え切れない私をスルーする先生。

私がそんなものだから、先生は1人でどこがいいかな、と聞いたことのない店名やホテルの名前を呟く。
その間も、あ、あの悪いですと断りを入れるも全く聞こえていない様子。

先生とご飯なんて……。
一体どんな凄いとこに連れていかれるのやら。

本当に私が好きで勝手に作っているだけなのに。
むしろ、大好きな先生に喜んで食べてもらえてすごく嬉しいのに。

気を遣わせてしまって申し訳ない。



それに一番の問題が……。

私、そんな良いところで食事できるような、服もバッグも持ってない……。
私みたいな貧相な貧乏人連れて歩いたら先生に恥ずかしい思いをさせてしまうのに。


どうしたらいいの……っ!?




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