現代のシンデレラになる方法



どうしよう、やっぱり皆気付くよね。

先生も私なんかと仲良くしたら、評判を落とすんじゃ。
どうしよう先生の人望を失うことになったら……。

やっぱり、やり過ぎだったんだ。
調子に乗り過ぎたんだ。




いつになく肩を落とす私。

そんな中、また外科から電話が入り病室へ向かう。
もう終業時間をとっくに過ぎた6時になろうとしている時間だ。

今までは5時を過ぎたら翌日に回すようになっていたのに……。


その途中、扉の開いた医局から声が聞こえてきた。

「先生ー、今日飲みに行きましょうよー」

「だから車だから行かないって、毎回そう言ってんだろうが」

「えー」

ちらっと見ると、座ってカルテチェックする先生を若い看護師数人が取り囲んでいた。

ナーススカートから伸びたすらりと長い足。
明るく染めた髪と、勤務後にも関わらず綺麗に化粧している。

他の看護師さんも皆綺麗な人達ばかりだった。



「先生、あの地味子ちゃんといつも一緒に病院来てるって本当ですか?」

すぐ立ち去ろうと思ったら、唐突に自分の話が出てきて思わず隠れて耳をすましてしまう。


「あ、あぁ、あいつすっげー遠いとこから自転車で来てるからさ」

「え、交通費節約してるとか?」

「電車が苦手なんだって」

「えー先生優し過ぎですよー。電車苦手なんて甘えてるだけじゃないですか」

「まぁ、確かに」


その言葉に耳を塞ぎたくなって、その場から逃げ出すようにして離れた。

本当看護師さんや先生の言う通り。
これは甘えなんだ……。

今日は、なんだか病院にいたくなかった。
運良く今日急ぎでやらなきゃいけない仕事は終わってる。

もういいや。
明日に仕事を回そう。

時計を見ると6時をちょうど回った辺り。
ちょっと早いかな。

ちょうど帰宅ラッシュの時間になる。

……嫌な予感しかしない



でも、先生や看護師さん達の言うように、いつまでも苦手だなんて言ってられないでしょう……?



駅のホームは、予想を裏切らず人で溢れかえっていた。

久しぶりだ、こんな人だかりの中、電車に乗るのは。
今までは帰宅ラッシュの時間を避けるため、毎日遅くまで残っていたから。







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