現代のシンデレラになる方法


相澤だって、恋愛経験は少なそうだが一応大人だ。

誰と関係を持とうが、誰と付き合おうが俺が干渉する余地はない。



だけど、

あいつはだめだ。

あんな馬鹿な男のために、こんな純粋な相澤を利用させてたまるか。



いつ相澤があいつから誘われるか気が気じゃない。

お人好しな、相澤のことだろうから絶対断らないだろうし。

それでまんまと食事会に行って勧められるまま飲んで、容易に手籠めにされる様が想像できる。



それからというもの、朝の車内で毎日同じ質問を繰り返すようになった。

「相澤、食事会誰かに誘われた?」

「い、いえ……?」

次の日も開口一番この台詞。

「食事会、誰かに誘われたか」

「い、いえ」

あくる日もまた。

「食事会、」

「いえ」





「相澤、食事会、

「誘われてないです」

それが何度も続いたからか、言い終わらないうちに言い切られてしまった。

すると、相澤が不審そうに聞いてくる。


「あ、あの先生。誰か私のこと食事会に誘おうとしてるんですか?」

「いや、」

そう聞かれたが、言えなかった。
下心丸出しの男がお前を狙ってる、なんて。


そうだ、こんなにやきもきしていないで、食事会の日、俺が別件でどこか食事にでも誘えばいい。
そうすれば、奴に食事会を誘われても断る理由ができる。

よし、そうしよう。



そう思って、翌朝の車内で切り出そうとした時。

俺が毎日のように何度も聞いていたからか、相澤の方から知らせてくれた。


「先生、誘われましたよ。食事会」


……一足遅かったか。
と心の中で舌打ちをする。

「誰に?」

「リハ科の方に」

「なんて?」

「こういう会は、院内の他職種のスタッフと交流できる貴重な場だからできるだけ来た方がいいって。仕事もしやすくなるだろうって」

はぁ?
もっともらしいこと言いやがって、お前の狙いはこいつの体だけだろ。


「で、行くのか?」

「はい、せっかくなので」


そう言って微笑む相澤。
奴の下心なんて何にも気づいてないんだろうな。



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