現代のシンデレラになる方法
あれは、今でも忘れられない。
今から2年前。
看護師として数年経ち、チームリーダーを任されるようになった頃。
新人とそれに近い年数の若いメンバー達との夜勤があった。
勤務表を見て、その日だけは、その日だけは何もありませんように、と祈っていたのに。
そんな祈りもむなしく、急変が起きた夜のこと。
新人が受け持っていた患者さんだった。
どうして、こうなるまで相談してくれなかったの?
とは、言えなかった。
この子が慣れない夜勤で精一杯頑張っていたのは知っていたから。
だから頭ごなしには怒れなかった。
先生から怒鳴られることを覚悟で、急いでコールする。
「先生、脳外の患者さんで、Sat拾えず、呼吸も弱く止まりそうな状況なんですが。すぐに来てもらえますか?」
「方針は?」
「フルコースです」
「すぐ行く、挿管の準備しといて」
「はい」
その日の当直は外科の東條先生だった。
先生の声を聞いて、ちょっとほっとした。
東條先生だったらまず怒鳴ったり感情的になったりしないからだ。
あらかじめ何も相談もなく、突然こんな風に挿管を匂わされたら、機嫌を悪くしたり怒る先生が多い。
ちょっと無愛想だけど、看護師の話はちゃんと聞いてくれるし、患者さんへの対応も丁寧。
若いのに、指示も無駄なく的確。
スタッフからも患者さんからも信頼の厚い先生だった。
そして何より、イケメン。
院内女子からの人気は、看護師を中心に絶大なものだった。
だけど今はそれどころじゃない。
先生はまだ若いけど、急変対応の経験あるんだろうか。
そして看護師もこんな若手だらけのメンバーで大丈夫なのだろうか。