先生の車から逃げ出したあの日からもう何日経っただろう。

何度か先生から話がしたいと連絡が来た。

でも私はそれに何も返せなかった。

院内でも話しかけられたが、ひたすら避け続けた。



先生への気持ちを改めて整理したかったのだ。

でも、先生を避けておきながら、いつでもその姿を探してしまう。

先生の笑顔を思い出すと胸が苦しくなる。




先生は、あの出会った日のことを覚えているだろうか……?


脳外の患者さんに絡まれたところを、助けてくれたこと。

事務長に怒鳴られた時にかばってくれたこと。

喘息発作を治してくれたこと。

前髪が長いって、私の髪の毛を触れたこと。

私なんかを可愛いって言ってくれたこと。

痴漢にあったときも励ましてくれて。

それから、ドレスを買ってもらって、デートもした。


先生。

どれもこれも私にとって特別な思い出です。

全部、なかったことにはしたくないんです。

私は確かに先生が好きでした。



距離を置いて、先生がどんな人であろうと、この気持ちは変わらないんだってことを知った。


だけど、

私が今までしてきた行動を振り返った。

先生が喜んでくれたからお弁当を作り続けて、最初はお近づきになれるだけで良かった。

なのに、


でも、本当にそれだけ?


実は心の奥底では、もしかしたら先生と付き合えるかもしれない……。

なんてそんな浅ましい考えがあったんじゃないの?


本当に、私なんかが恥ずかしい。

先生が好きだ。

でもその好きな先生と、この私が付き合うのは許せない。

私なんかが、先生と付き合っちゃいけないんだ。


だって私は……。

思ったことをはっきり言えなくて、いつもどもってばかりで、

すいませんが口癖で、人に気を遣ってばかり。

仕事もできなくて、人をイラつかせる。


そんな私が、私自身が一番嫌いなのだ。

だからそんな私が、大好きな先生と付き合いたいなんて一瞬でも思ってしまったことが、腹立たしくてしょうがないのだ。

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