現代のシンデレラになる方法




帰りの車中、相澤にずっと聞きたかったことを確認する。


「俺のせいで外科の看護師達にいじめられてたんだってな」

「えっ?いじめ?」

「なんだ違うのか?」

「い、いえ、いじめというか……、ちょっと冷たい感じはしましたけど」

「色々考えたんだけど付き合うとなったら、またそういうことがあるだろう?俺から一言、言ってやっても、

そう言うと言い終わらないうちに、珍しく相澤から大きな制止の声が上がった。

「ぜ、絶対にやめてください!」

……そう言うと思った。

実を言うと昴に衝撃の事実を聞いてから、看護師達に確認しようとしていたのだが、寸前のところで思いとどまったのだ。

絶対に相澤が嫌がるだろうと思ったから。

だけど付き合うとなったら、また相澤に辛い思いをさせてしまう。


「じゃもう仕事辞めて一緒に住むか?お前一人位余裕で養っていけるし」

「えっ!えぇっ!?」

「いきなり一緒に住むのに抵抗があるなら、別に今のままでも面倒見てやるけど」

「い、いや……っ」

「なんだ嫌なのか?」

「そ、そんなに気遣ってもらって、とても嬉しいのですが……先生にそんなにお世話になる訳にはっ」

「いやでも相澤に辛い思いをさせる訳にはいかないだろ」

「だ、大丈夫です、気にしません。し、仕事はできれば続けたいと思ってるので」

「へぇ、意外だな。今の仕事好きだったのか?」

「はい……っ。怒られてばかりで辞めたくなることもありますけど、今の仕事自体は好きなんです」

そう言ってにこっと笑う相澤。


「それに仕事中の先生が見れなくなるのはいやですから」

「え、なんで?」

「え?」

相澤は失言と言わんばかりに慌てて口をぱくぱくさせたあと、その口を手で覆った。

「白衣でも術衣でも家で着てやるよ?」

「そ、そういう訳じゃ……」

「じゃ、どういう訳?ちょっとそこんとこ詳しく聞きたいなー」

「な、なんか、せんせ、意地悪です……っ」

顔を赤くさせて困る相澤が可愛くてついつい意地悪してしまう。


しかし恥ずかしがり屋で内気過ぎる彼女に、つい心配になってしまう。

また、好きだと言ってもらえるだろうか。

また、キスができる日はくるのだろうか。

良かったさっき勢いでキスできて。

そんなズルいことも考えてしまう。


そして、おそらく経験のないであろう彼女の体に、いつか触れることができる日が来るのだろうか。

付き合うとは言っても、そんな彼女相手では好き勝手にことを進めていく訳にはいかないのだ。



……あぁ、しばらくは、このよこしまな煩悩に悩まされそうだ。



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