彼は会う度に私を乱雑に扱った。

そしていつも私を蔑んだ目で見る。


最初は、東條先生にどう近づけばいいのか知りたくて関係を持った。


だけど、彼は私をストレス発散の吐き口のように扱った。

彼が満足すればそこで終わり。


だけど不思議なことに、私はそれが嫌じゃなかった。

彼に荒々しく抱かれる間、全てを忘れられるような気がした。


私に複雑な感情をぶつけてくる彼。

そして私もそれを受け入れると、一時でも先生以外の男の人を感じることができた。



私は、東條先生への報われない想いを。

彼は、その先生への憎しみを。

私達は長い間、先生に囚われ呪縛されている似た者同士だった。



たとえそこにお互い好意なんてなくても。

本音は隠したまま、ただお互いを慰め合うように体を重ねた。



だけど、先生が嫌いという割には先生の前ではまるで表情が違うことにある日気付いた。

とても本当に嫌っているようにはみえなかった。



本心を尋ねると、ぽつりぽつりと昔のことを話してくれた。


ずっと東條先生に劣等感を抱いていたこと。

皆、自分を東條貴之の弟という目で見た、と。

だけど、そんな時できた年上の彼女は初めて自分だけを見てくれて、自分だけを愛してくれたそう。

そんな彼女と、真剣に結婚を考えていたとも。


その彼女は、誰もが知っている一流企業の商社に勤めているだいぶ年上の女性だったらしい。

その人が、なんでも教えてくれた、と。

だけど東條先生を紹介したところ、あっさり乗り換えられてしまったとのこと。

それがそもそもの発端だったと。


そして、

こっぴどく捨てられたのに、今でも心の奥底では彼女を忘れられないということを。



兄貴は好きだけど、どうしてもそれが許せずにいる。

だから兄貴を好きな女は嫌いだ、と言っていた。


私達が、まともに会話を交わしたのはこれっきりだった

だけど彼の深い内面が知れたような気がした。



その話を聞いてから、

行為中、ふと彼が誰かに助けを求めるような寂しそうな目をすることに気付いた。

純粋にどうにかしてあげたいと思った。

自分から深みにはまり傷つこうとする彼が放っておけなかった。

私が手を差し伸べて助けられるものならば、と。




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