星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】






へなへなっと
力なく座り込んだ私。




突然の出来事に
頭はパニック。




だけど託実がこの場所に来た証は
私の手に、しっかりと握らされていた。




少し落ち着きを取り戻して、
私は、事務所に戻ると着替えを済ませて、
画廊を後にする。


鞄から携帯を出して親友に電話。



メロディーコールが流れ続けるものの、
親友が電話に出る気配は一向にしない。



脳裏に浮かぶのは、唯香が自宅ピアノをガンガンに
のめり込んで演奏する姿。



……聞こえてないか……。





そうふんだ私は、
留守番電話に繋がった携帯を一度切って、
何度か電話をかけ続ける。


繋がらなかった時間にちゃんとLIVE武装して、
現地にも到着しながら。



「もしもし、百花?」



電話が繋がって、
ようやく聞えた唯香の声。



「遅いぞーっ!!。

 ったく、唯香…アンタまた、
 部屋でピアノに没頭してたんじゃないよねー」

「唯香、今からちょっと出てこない?」

「今からって、何処まで?」

「霞が丘」

「霞ヶ丘って…Ansyal?」

「そうそう。

 別に来ないんだったら私だけ
 行っちゃうけど……」

「なんかあるの?
 Taka?
 私の王子様が出るの?」

「って…誰が唯香の王子なのよ。
ったく」

「でもでも、LIVE情報なかったじゃん」



そうだよねー。

LIVE情報、なかった。



託実が教えてくれないと
私も完全に出遅れてた。



「唯香、私を誰だと思ってるの。

 今、演奏してるメンバーの後に
 Ansyalがゲストで少しだけ演奏するらしいんだ。

 シークレット。
 後、二組後かな」


親友なのに……託実からってことは
言えないままに。


「行く行く。

 絶対に行くから…。
 あっ、でもチケット?」

「バカなアンタが電話に出ない間に
 こうなる予感がして買っておいたから。

 とっとと来なさいよ」




電話を切った私は出入りの激しい、
霞ヶ丘のLIVEハウス前。



託実に貰ったチケットを抱きしめて
唯香の到着を待ち続けてた。






シークレットLIVE。


そして託実が画廊に来て、
私の絵を買ってくれたこと。






秘密な出来事が
多すぎて……。




その秘密の分だけ、
甘く幸せな気持ちになれる
魔法の余韻に満たされてた。
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