星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】



LIVEの興奮が今も冷めやらない私たち。

唯香と逢ったのも久しぶりだから、
その日は会場近くの居酒屋で、二人打ち上げ。

1時間半くらいの間、
Ansyalへの愛を語り合い、
5月・6月とサイン会も、LIVEも予定されていない現実が悲しくて
カラオケやショッピングに行きたいと、
遊ぶ約束を取り付けて23時頃に居酒屋を後にした。



唯香と別れて、自分のマンションに戻る間
チクリと心に突き刺さる、本当のことを話せなかった罪悪感。



『唯香、そのチケット託実が直々にくれたんだよ』



そうやっと堂々と言えたらどんなにいいだろう。


唯香だったら話しても大丈夫って思う反面、
画廊のお客様のプライバシーにも関わる問題だから
話すことなんて出来ない。


そんな葛藤を抱きながら自宅マンションにつくと、
PCを立ち上げて、Ansyalのオフィシャルサイトへと向かった。


そこにはメンバーそれぞれの、
個別ファンメールと、ブログに入れるLINKが繋がっている。



託実に今日のお礼を伝えたい。

託実の住所は、画廊の顧客情報に今日入ったのは間違いないんだけど
スタッフ特権でプライバシーを知って、
直接お礼を伝えるなんてことはやりたくなかった。


だからいつもの様に、ファンメから託実にメッセージ。





託実さま



今日のシークレットライヴ、チケットくださって
本当に有難うございました。

託実が教えてくれなかった、
私、かっこいい託実に逢うことなんて出来なかった。


何度も何度もステージから視線を向けてくれてるみたいで、
めちゃくちゃドキドキして幸せでした。


素敵な時間を有難うございます。

この後は、暫くLIVEもサイン会も予定がなくて寂しいです。
レコーディングに入るのかな?



またお会いできるの楽しみにしてます。


感謝を込めて。


百花





ありのままの気持ちを文字に乗せて、
ゆっくりと送信キーを押す指先に力を込めた。





そのまま着替えを済ませて、
メイクを落としてシャワーを浴びると
ベッドに寝転んだまま、
天井の託実のポスターをボーっと見つめる。





夢のような一日を振り返りながら、
生託実の衝撃を思い出しつつ、
掛布団にすっぽり包まって、
僅かに出した目から、チラチラとポスターを見つめる。




いやっ、どうしよう。

ポスターだってわかってるのに、
マジマジと託実を見つめられなくなってる。

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