星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
LIVEの興奮が今も冷めやらない私たち。
唯香と逢ったのも久しぶりだから、
その日は会場近くの居酒屋で、二人打ち上げ。
1時間半くらいの間、
Ansyalへの愛を語り合い、
5月・6月とサイン会も、LIVEも予定されていない現実が悲しくて
カラオケやショッピングに行きたいと、
遊ぶ約束を取り付けて23時頃に居酒屋を後にした。
唯香と別れて、自分のマンションに戻る間
チクリと心に突き刺さる、本当のことを話せなかった罪悪感。
『唯香、そのチケット託実が直々にくれたんだよ』
そうやっと堂々と言えたらどんなにいいだろう。
唯香だったら話しても大丈夫って思う反面、
画廊のお客様のプライバシーにも関わる問題だから
話すことなんて出来ない。
そんな葛藤を抱きながら自宅マンションにつくと、
PCを立ち上げて、Ansyalのオフィシャルサイトへと向かった。
そこにはメンバーそれぞれの、
個別ファンメールと、ブログに入れるLINKが繋がっている。
託実に今日のお礼を伝えたい。
託実の住所は、画廊の顧客情報に今日入ったのは間違いないんだけど
スタッフ特権でプライバシーを知って、
直接お礼を伝えるなんてことはやりたくなかった。
だからいつもの様に、ファンメから託実にメッセージ。
*
託実さま
今日のシークレットライヴ、チケットくださって
本当に有難うございました。
託実が教えてくれなかった、
私、かっこいい託実に逢うことなんて出来なかった。
何度も何度もステージから視線を向けてくれてるみたいで、
めちゃくちゃドキドキして幸せでした。
素敵な時間を有難うございます。
この後は、暫くLIVEもサイン会も予定がなくて寂しいです。
レコーディングに入るのかな?
またお会いできるの楽しみにしてます。
感謝を込めて。
百花
*
ありのままの気持ちを文字に乗せて、
ゆっくりと送信キーを押す指先に力を込めた。
そのまま着替えを済ませて、
メイクを落としてシャワーを浴びると
ベッドに寝転んだまま、
天井の託実のポスターをボーっと見つめる。
夢のような一日を振り返りながら、
生託実の衝撃を思い出しつつ、
掛布団にすっぽり包まって、
僅かに出した目から、チラチラとポスターを見つめる。
いやっ、どうしよう。
ポスターだってわかってるのに、
マジマジと託実を見つめられなくなってる。