星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】

8.惹かれていく -託実- 



FC旅行最終日。
早朝からホテルの部屋のドアをノックする音が聴こえた。


ベッドに沈んでいた重い体を、
引き上げるように体を起こすと、
部屋のドアを内側から開けた。


「託実、話があるわ」


そう言いながら、見るからに眉間に皺を寄せて
入って来るのは、Ansyalのマネージャーを大学時代から手伝ってくれる
東城実夜【とうじょう みや】。


入り込んできた実夜の背後で、
カチャリと音を立ててドアが静かに閉まった。


「託実、私が此処に来た理由、
 貴方ならわかるわよね。

 隆雪の親友の貴方が……
 今のこの時期に、何てことしてるの?

 ファンの女の子を自室に連れ込んで。
 隆雪が大切にしてるAnsyalを潰したいの?

 ゴシップ誌のカメラマンが来てたらどうするのよ?
 ただでさえ、Ansyalは注目が高いのよ。

 隆雪が交通事故で眠りについたままの現状も世間は知らない。
 ファンを悲しませないように欺いたことが、ファンの為だと言うなら
 最後まで守りなさいよ。

 Ansyalのリーダーとして隆雪から意を任されてる貴方の軽はずみな行動、
 私は一人の人間として軽蔑するわ。


 最低よ。
 Ansyalためにあの子の存在は目障りよ。

 もし貴方が、あの子に執着を続けるようなら
 私は迷いもなく、あの子を消すわ。

 隆雪の宝物なのよ……。
 親友の貴方が、軽率な行動で壊していいものじゃないの。

 貴方にはAnsyalを守る義務があるのよ。
 それだけは忘れないで。

 今回の一件、社長と会長には報告させて貰うわ」
< 67 / 253 >

この作品をシェア

pagetop