星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】

11.ぬぐえない過去 -百花-



お姉ちゃんの命日の日。
お寺の駐車場で、偶然出会った託実。


『大切な人が眠ってる』


そう紡いだ託実の言葉が、
私を現実に引き戻す。


そう託実が私を好きになるなんてない。


託実はAnsyalの託実で、
大勢のファンが存在するアーティスト。



私は……託実にとっては、
大勢のファンすぎない。



わかってたはずじゃない?



わかってて夢を見ていたはずなのに、
夢から覚めてみると……こんなにも苦しい。




9月に入り、新学期と共に唯香は病院を退院して
学校の教師として復帰する。


あの病院に通わなくて良くなったのは本当に嬉しい。


だけど唯香の傍には、
教え子の宮向井君っていう男の子が甲斐甲斐しいほどに傍に居て
私の出る幕はなし。


邪魔ものは大人しく退散しようと、
私は夜はマンションに引き籠る生活に戻る。


命日が過ぎると……いつもそう。


お姉ちゃんを忘れないために……
お姉ちゃんの気配を少しでも感じていたくて、
お姉ちゃんの絵をキャンバスに描きたくなる。



本当はもっと傍に居たかったんだよ。

お姉ちゃんの傍に居て、
もっともっといろんなこと教えて欲しいし、遊びたかった。



パソコンを起動して、
お気に入り登録している動画を追いかけていく。



本当は違法なのかもしれないけど、
それでも私の知らないお姉ちゃんの姿を見ることが出来るのは
凄く嬉しかった。


ネットサーフィンをして見つけては、お気に入り登録を繰り返し続けてきた
膨大な量のお姉ちゃんの動画。
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