星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】

13.近づきたい -百花-



まだ残暑が残ってる9月中旬。

私の手元に届いたのは、
香港で忘れた戦利品と、託実からの洋菓子のプレゼント。

そして託実の連絡先が記された番号と、
デートを予感させるお誘い。


自宅マンションに戻って、
震える指先でどうにか電話番号をプッシュして
託実へと発信した。



「もしもし、亀城です」


暫くすると託実の苗字をコールする声が聴こえる。


「夜分にすいません。
 喜多川と申します。

 託実さんの携帯電話でしょうか?」


こんな挨拶しか緊張しすぎて
言葉が出てこない。

ドキドキしたまま時間をやり過ごしていると、
何時も私と会話するときの、
優しい託実のトーンが聴こえてきた。


「百花ちゃん、電話有難う。
 仕事、終わったの?」

「はいっ。
 えっと……今仕事終わって、お祖父ちゃんから
 託実さんのくれたお届け物全部頂きました。

 後……電話番号も。
 こんな大切なもの、私に教えちゃっていんですか?」

「構わないよ。
 俺が百花ちゃんには知っていてほしかったから」






ねぇ託実……知ってる?



託実が私に紡いでくれる
一言一言が、どれだけ私に影響を及ぼしてるか知ってる?


託実が知っていてほしいってそう言ってくれた言葉が
ずっと『遊びだった』って言われることが怖すぎて、踏み出せなかった私には
あまりにも嬉しくて、涙腺が嬉し涙で崩壊していく。


大好きな人が言ってくれるその言葉が、
どれだけ嬉しいか……託実は知ってる?


「良かった……」

必死に呟いた一言も、
涙に声が震えてしまう。


「良かった……。すいません、ヒック……
 嬉しいはずなのに……ヒック、涙が……」


< 96 / 253 >

この作品をシェア

pagetop