長居するのもどうかと思って、私はすぐに想一郎さんたちのオフィスを後にした。

途中、通りがかったフロアには、蓮さんや他の社員の姿はなかった。
まだ、蓮さんは同僚の人たちとランチをしてるんだ、と思ったら、胸の奥が強く掴まれたみたいに、ギュッと痛んだ。

帰る途中もずっと、怒りとも悔しさとも悲しさとも言えない感情に支配され、気分が悪くて仕方がなかった。

家に着いて、遅めのお昼にしようと冷蔵庫の扉を開けると、渡せなかったおにぎりとおかずが目に入る。その瞬間、もどかしい感情はさらに私の心を強く支配した。

勘違いする蓮さんも。
素直になれない自分も、何もかもが気に入らない。

怒ったって仕方がないと分かってはいても、どうしようもできない感情に苦しくなる。

私は溜息を吐きつつ、お弁当を取り出した。

勿体無いし、これをお昼にしてしまおうと、電子レンジで温める。
軽くお皿に盛り直して、テーブルに運んだ。

いただきます、と呟き、箸を取ろうとした時。玄関の方で扉の開く音がしてドキリとする。

まさか、と思いつつ 、リビングの扉を見ていると、そこから蓮さんが現れた。

「れ……蓮さん?どうしたんですか?」

「あぁ…、いや。…仕事が早めに終わったから、帰ってもいいことになって…。藍も帰ったって言うから、折角だから…帰ってきたんだ」

蓮さんは、そう言ってソファに体を預けた。背もたれに体重をかけ、ネクタイを緩める。

その様子は、なんだかぐったりとしているように見えた。

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