自分の本当の想いに気づいてしまった。

想一郎さんは愛せない。
蓮さんのことが好きだから。

それでも、蓮さんの期待に応えたい。
そのためには、想一郎さんの婚約者にならなくてはいけない。

矛盾する二つの感情が私の中で渦巻いている。

私は包丁を動かす手を止め、深く溜息を吐いた。
夕飯の準備は少し落ち着いてからにしようと、台所を離れ、エプロンを外してソファに体を投げ出す。

そういえば、昨日同じように蓮さんも体を預けていたな、と思い出し、余計なことまで脳裏によぎる。

蓮さんの甘えた表情。
弱っているけれど、魅力的な姿。
そして、そんな彼を愛しいと思う自分。

思い出しただけで、過去の自分に嫌気がさしてしまう。

何故、あの時あそこにいてしまったのだろう。

せめて、あの瞬間がなかったら、私はこれほどにも苦しまなくて済んだかもしれないのに。
こんな煩わしい気持ち、気づかなかったかもしれないのに。



私は天井を仰ぎ見て、真剣に考える。

蓮さんへの想いを持ったまま、想一郎さんの婚約者を目指す、なんて、そんな不誠実なことをしていてもいいのだろうか。

それなら、期待に応えられないことを蓮さんに謝って、ここを出て行くしかないかもしれない。

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変身  シンデレラ  四角関係 

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