「これからこの部も騒がしくなりそうですよねぇ」

 美奈子はただでさえ恋愛に現を抜かすと仕事が疎かになりがちだ。

  思わずため息が出る私とは違い、響子はやはりどこか楽しんでいるように見えた。

「響子、トラットリア・ロッソの契約書終わったの? 鮫島主任がまだ書類が上がってこないって朝からぼやいてたわよ」

「いけない! すぐやりまっす」

 逃げるように、響子はデスクに帰っていった。

「はあ……」

 早速、本日二回目のため息が漏れる。

 私はスムーズに仕事を進めたいだけなのに、回りの女の子たちは仕事そっちのけで目新しい男に気を取られてる。

  ひょっとしたら、それも美奈子だけじゃないのかも。

  このオフィスのあちこちで私の憂鬱の種が今にも芽吹こうとしているのを感じて、私はまた重たいため息を吐いた。

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