サヨナラなんて言わせない
君の名は
「涼子さん、いってらっしゃい」

「・・・・・・・・・いってきます」

耳を澄ましてようやく聞こえるくらいの小さな声で彼女はそう言うと、
まるで逃げるように家を出て行ってしまった。


あれから、我ながら強引だとは思ったが何とかここに居候させてもらうことになった。
彼女は最後まで相当抵抗していた。

それも当然だろう。
彼氏でもない男と一つ屋根の下で過ごすなんて。
俺が逆の立場なら受け入れるはずがないのだから。

それでも俺にとって彼女はとても重要なキーパーソンであることに違いはない。
何一つわからない中でも彼女を見た瞬間稲妻が落ちたのだから。

強引すぎて通報されてしまうことも覚悟していた。
だが、最終的に彼女は俺を引き止めてくれた。

優しさにつけ込んだ形で心苦しいが、
記憶を取り戻すため、何故彼女を見てあんなにも心が揺さぶられたのかを知るため、今は彼女の優しさに甘えさせてもらう他道はないのだ。
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