もうひとつのエトワール
もうひとつのエトワール

ふわりと広がるフレアスカートや、レースやリボンをあしらった可愛らしいトップスが似合って、生クリームがたっぷりの甘いケーキが好きで、そこはかとない弱さがつい守ってあげたくなるような……そんないかにもな女の子に、本当はずっと憧れていた。


「……どうした?菜穂」


ハッとして顔を上げると、ノンフレームの眼鏡がよく似合う顔が、心配そうにこちらを見つめていた。

真希とは違ってこちらは正真正銘に知的な眼鏡の佐々野 彰良(ささの あきら)は、菜穂の交際相手である。


「えっ?あっ、ごめん。何か、ぼーっとしてた」


彰良の休みと菜穂の休みが偶然にも一致したこの日、二人は久しぶりにおしゃれなレストランでランチを楽しんでいた。

いつもはお互いの仕事終わりにしか時間が取れないため、もっぱら行くのは居酒屋ばかりだった。

その為、今日という日は二人にとって貴重にして大切な日で、楽しい時間を過ごしたいはずなのに……心の中では不安な気持ちが渦巻く。
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